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12RIVENレビュー

感想とか評価とも言う。

総評

一言で表現

Ever17短所を凝縮して、さらに、腐らせたような感じかな。Ever17長所に相当する部分が全く無いのはどうしたもんだろう。

前置き

次に2つは全く別物なので混同しないように。

  • 現実的な実現可能性=フィクションには不要
  • 物語内の辻褄合わせ=作品の品質を決める重大要素

12RIVENの欠陥は後者であって前者ではない。

この作品の設定が物理法則に反しているとか、疑似科学的解釈だとか、そんなことは全く問題がない。フィクションなのだから、物理法則に厳密さは必要がないし、疑似科学的解釈はいくらでもやって構わない

重要なことは作品の中での整合性であって、現実と整合している必要は全くない。その詳細は物語の条件に詳細に解説してある。

辻褄

結論から言えば、アイデアに頼り過ぎた作品でしょう。 盛り込まれた多数のアイデアのひとつひとつは一見の価値があると言えます。 しかし、そのアイデアをゲームのシナリオとして通用させるまでの練り込みが全く足りず、次のような物語の根幹を為す部分で致命的矛盾が生じています。

  • 事件の発端のひとつである新首都圏電波塔のΨバトルが実現不可能
  • 事件を解決に導くキーマンとなる某男性の自我発生があり得ない
  • ハッピーエンドに必須となる某男性の超回復があり得ない
  • 基本的なΨ有効活用法が整理できてない

その矛盾は、既出技術設定を完全に覆すような新設定を持ち出さなければ解消不可能です。 Ψ能力にしろ、その他の設定にしろ、作者が自分で持ち出した設定です。 にもかかわらず、手に負えなくなったからと辻褄合わせを投げ出すようでは大人の対応とは言えません。 細かい部分での矛盾は許容範囲としても、少なくとも、物語の根幹に関わる部分ではきちんと辻褄合わせをすべきでしょう。 矛盾の詳細は12RIVEN考察 矛盾点で解説します。

12RIVEN.png

隠れた真相

読者が気付かないだけで隠された真相がないとは限らないじゃないか・・・と思考放棄する人もいるが、多数の読者が真相に気付かないという時点で、プロの作品として失格なのである。

確かに、推理物では、難解な作品は許容される。もちろん、その条件として、推理に必要な情報が十分に提示されていることが前提であるが。しかし、物語の条件に示すとおり、12RIVENは、種明かしまで重大なSFギミックが明らかにされないから、推理物ではないのは明らかである。推理物ではない以上、多数の読者に理解できるようにすべきである。読者に推理させないならば、故意に難解にする必要は何処にもない。また、不可抗力も言い訳にはならない。どんなに複雑な話であっても、描写を工夫して説明するのが当然であり、分かりやすく説明できないのはプロとして力量不足でしかない。物語の条件に示すとおり、「実は推理物でした」と言うのも反則である。もちろん、辻褄の合う真相が用意されていないのは論外である。

よって、発売から長く経った、今においても、物語の主要部分について辻褄の合う答えを誰も見つけられない・・・というだけで、駄作の烙印を押されても当然と言える。それを見て、答えがあるかも知れないと言う方が、事実を受け入れられずに思考放棄しているのである。

感情移入

錬丸視点と鳴海視点の切り替えが早過ぎて感情移入しにくい。主人公を含めて登場人物の行動パターンに理解し難い(頭が悪い)所が多く、性格の悪さ等から好感も持てないため、プレイするのがかなり苦痛です。Infinityシリーズ伝統の志村現象(プレイヤーが気付いていることを主人公が不自然なまでに露骨に無視する現象)が今回も多々あり、展開にはかなりイライラします。

陰謀

陰謀部分の描写が三流すぎます。アレだけの組織を作って陰で暗躍できる人物が、全人類愚民化計画のもたらす結果=経済的衰退を予想できないはずがありません。このような陰謀描写は素人同然です。同じ作者の作品であるEVE new generationは、黒幕も含めて、登場人物の誰もが、その人と成りに説得力が満ちあふれていました。唯一、田舎の島民が新興宗教に洗脳されることだけが説得力に欠けていたくらいで、意味不明の陰謀などは存在しませんでした。発表時期もそんなに変わらないのに、180度違うのは何故なのでしょうか。

トリック

キャラの書き分けが出来てないのを何度もトリックに用いるのは反則でしょう。 また、プロローグでの「トリック」はEver17の使い古しです。 しかも、叙述トリックの条件に示すとおり、虚偽情報を用いたアン・フェアな叙述トリックです。

あっと驚くトリックを期待するのであれば、シリーズを超えたゲームで紹介するゲームをやった方が良い

愛?

12RIVENを力点を「運命」や「純愛」に見出したと言う人もいるが、(゚Д゚)ハァ?って感じだ。リンク先の記述は何処から突っ込んで良いのか分からないので、敢えてスルーしよう。しかし、12RIVENの描写の中でも愛に関する部分の描写が最悪の部類に入ることは間違いない。

メールをもらうまで高江ミュウの存在を忘れてた雅堂錬丸が、愛する者を守るのに必要なものは愛だけだとか力説しても、端から見れば馬鹿みたいなだけだ。短時間で愛を育むだけの説得力のある描写もなく、何処からどう見ても、愛の何たるかを分かってない奴が自分に酔って大げさな表現を使っているだけにしか見えない。ついさっき、ナットを削って即席で作った指輪も、子どもの遊びの域を出ていない。言ってることは大げさだが、その中身が薄っぺらいから、感動よりも先に嘲笑を呼び起こしてしまう

そうした人間ドラマの部分がシッカリしていれば、他が駄目でも一定の評価は出来る。しかし、人間ドラマが駄目、トリックは劣化コピーかつ大嘘つき、展開の辻褄が全く合っていない・・・では、一体、何を評価しろと言うのだろう。

参考

このサイトの感想が的を射ていると思われる。

Ever17は傑作、というのはほとんどの人が同意すると思いますが、Remember11と12RIVENは評価が分かれるでしょう。
何となく思ったのですが、
R11が好きな層と、12Rが好きな層はあまり被らないのではないでしょうか。
というのも、
R11は考察&ミステリ要素をエンターテイメント性より前面に押し出しているのに対して、12Rは明らかにエンターテイメント性を優先しています。
そのため、R11が好きだった層(=考察、謎を読み解くのが好きな人)にとっては、12Rは矛盾点が多すぎて微妙・・・・・・ということになりかねないです。
逆に、整合性よりも純粋な面白さを重視するなら、R11よりは12Rのほうが好き、ということになるでしょう。
もちろん、それに当てはまらない人も多数いると思いますが・・・・・・。
色々な人の感想を聞いていると、R11が好き=12Rは微妙 or R11は微妙=12Rが好き、という関係がなりたっているような気がしました。

明快であれば辻褄なんて気にしないという人には文句なく楽しめる物語だろう。しかし、完成度の高さを求めるなら、全く話にならないお粗末さである。

まとめ

12RIVENは、駄作とまでは言えないが、佳作でもない、平凡な凡作とするのが妥当な評価だろう。発売前から駄作の疑いがあった。

  • 公式の説明文や体験版が駄作臭い
  • シナリオの遅れによる発売延期で突貫工事が予想される

これらから「今回は駄目かも知れないな」とは思ったが、前者については取り越し苦労だった。しかし、後者は見事に的中している。駄作予想のおかげで、期待してなかったと言えば期待してなかったのだが、駄作の予想は裏切って欲しいという期待もあったので、期待外れと言うのは間違いではなかろう。

辻褄合わせを放棄した出しっ放しのギミックでは評価に値しない。そして、ギミックは数撃てば良いってものでもない。少ないギミックやシンプルなギミックでもキッチリとまとめることが大事なのであって、どんなに大風呂敷広げたギミックを連発しても、作品として形になっていないのでは評価に値しない。ユーザーは、ゲームを買ったのであって、ギミック集を買ったわけではないのだ。完成ギミック集ならまだしも、未完成ギミック集を掴まされたユーザーの身にもなってもらいたい。

  • 登場人物達の苦悩とかが全く伝わって来ない薄っぺらい心情描写*1
  • 頭の悪い言動を繰り広げ、頭の悪い陰謀*2に立ち向かう、とても幼稚な人間ドラマ
  • Infinityシリーズの伝統的短所=トリックを成立させるための志村現象*3が多数
  • 虚偽情報でユーザーを騙し討ちにする卑怯な使い古しトリック・・・というか、詐欺
  • 頻繁な視点変更による感情移入の妨害*4
  • 聞いているだけで頭がおかしくなりそうな疑似科学設定(完成ギミックならば疑似科学でも問題なし)*5
  • 何時、何が起きたか、細かいエピソードを全て憶えていないとサッパリ訳が分からない無駄に複雑な展開*6

これだけ見れば、何処からどう見ても駄作でしかない。本来、未完成ギミックはシナリオの評価対象とすべきではないのだろうが、未完成ながらも発想がぶっ飛んだ大掛かりなギミックの数々は、ギミック好きな人にはそれなりに楽しめるものにはなっている。そうしたギミック単体の敢闘賞的評価を加えてようやく凡作と言ったところだろう。ちなみに、シナリオの出来に関しては、完成まで今一歩のギミックも、全く形もないギミックも、シナリオに対する貢献度は共に0である。完成していないギミックは無いのと等しい。

前作Remember11には明快さが欠けていて評判が悪かった。今作12RIVENには前作にない明快さがある。しかし、その代わりに前作にあった辻褄の整合性が大きく損なわれている。明快さを得るために他の何を犠牲にしても良いということにはならない。今作では、得た物よりも失った物の方が遥かに大きい。前作も良作とまでは言えない物の評価に値する要素はあった。しかし、今作では何も評価できる部分がない。

後付け設定が導入できるから12RIVENは駄作でないと言う人もいる。しかし、物語の条件でも述べた通り、物語中の主要課題は先付け設定で解決しなければならない。ピンチに陥った時、「実は密かに新兵器を開発してたんだ」と読者の知らない新兵器が唐突に出てきて敵を一掃するのは反則である。「どうやってこのピンチを凌ぐつもりだろう」と読者をワクワクさせておいて、万能設定を持ち出して解決するのでは、余りに幼稚すぎる。そんな小説なら小学生にも書けるだろう。制約の中で登場人物が奮闘するからこそ人間ドラマとしても面白いし、反則なしの知恵を披露するからこそ作者の思考に感心するのだ。後付け設定である限り、どんなに小難しい理屈をこねた所で、形だけの制約を繕っているに過ぎない。制約が後付けである以上、実質的には、制約なき万能設定と何ら変わらない。

考察する側に立っても、万能設定は意味がない。ただし、既に答えの示されている物語について、さらに深く考察するという場合には話は別である。しかし、一見して辻褄の合う答えがない、その答えを探すために考察する、というのであれば、万能設定は意味がない。何故なら、万能設定を許せば、どんな答えでも簡単に作れてしまうからである。それならば、答えを探す必要はない。難しい理屈は抜きで「とにかく出来る」の一言で終わってしまう。万能設定を許容することは、そういうことである。

さらに言えば、次の2つは全くの逆である。

  • 辻褄が破綻してしまって矛盾のない回答が示せない
  • 考察の自由度が高い

前者は回答が1つも成立しない状態であり、後者は回答が複数成立する状態である。回答が1つの物語を基準とするなら、両者は正反対の位置にある。先付け設定の中で回答が成り立つからこそ、考察が可能なのである。そして、複数の回答が成り立ってこそ、その自由度が高いと言える。手抜きして辻褄合わせを放棄した物語と巧みな計算に基づいて読者に自由な考察を促す物語は全く違う。12RIVENは、間違いなく前者=手抜きして辻褄合わせを放棄した物語である。

仮に、百歩譲って、辻褄の合う答えを用意しながら明示しなかっただけとしても、手抜きであることには変わらない。たとえば、メガネ錬丸の「自我」に関する考察を見てもらいたい。もし、これが正解だったら、作者は「自我」と自我意識を取り違えた振りをしていて、それがトリックの仕掛けに組み込まれていることになる。そんなトリック、誰が見抜けるんだ?作者の真意と逆の描写をしてプレイヤーを欺いたら、答えなんか見つかるわけがない。この考察は、偶々運良く見つけられただけであって、普通にやってたら、まず、気付かないと思う。別件を深く掘り下げていた時に偶然見つけた事項と、その直前に整理した事項がなければ、見つけることは叶わなかった。回答に至るためのヒントが足りないばかりか、こんな妨害工作を仕掛けられていては、自由な考察をしろと言われても無理だ。妨害工作を仕掛けるなら、その妨害工作を見抜けるヒントをキッチリ用意すべきだろう。そうしたヒントを残していない以上、手抜きであるとしか言い様がない。

ネットでの評判

以下、ネットでの評判を集めてみた。

批判的なものばかり恣意的に集めたと思われるかも知れないが、12RIVENを理解できてないと思われる感想を除外しただけである。決して、発言の方向性で選別したわけではない。

苦言

作者は自身のブログで信じられないことを仰ってます。

たいていの作品の場合、たとえ全力を尽くして書き切っても、いくつか思い残すところがあったりするものですが、今回の12Rではそれさえありません。ぼくの力量などたかが知れていますが、それでもぼくなりに、ちっぽけな才能をぎゅるぎゅると振り絞って、100%、200%のものを注ぎ込ませて頂いたつもりです。

打越氏のこれまでの作品の出来を見る限り、数々の矛盾に気付いていないなど、どう考えたってあり得ません。それなのに、どうして「100%、200%のものを注ぎ込ませて頂いたつもり」と言えるのでしょうか。かつて、打越氏はRemember11の設定資料集で次のような語っていたと言われます。

ここだけの話ですが、監督さんとぼくの間には、しばしば激しい軋轢が生じたりしました。

軋轢を恐れて今回は大人の発言を貫いたってことなのでしょうか。でも、それってファンに対する裏切り行為なのでは?自身の次の言葉も思い出して欲しい。

お互いが「プレイヤーのことを最優先に考える」という点では共通していたのですが、 その方向性が全く逆になってしまったのです。 無論、どちらが正しいとか、正しくないとかそういう問題ではありません。 それぞれ、表現者としての信念が、真逆のベクトルになってしまった……ただそれだけのことです。

「どちらが正しいとか、正しくないとかそういう問題」ではないのならば、軋轢を恐れて「表現者としての信念」をねじ曲げるのはおかしい。今回も、軋轢を恐れることなく「表現者としての信念」を貫くべきだったのではないでしょうか。

事前情報をチェック

事前情報は嘘ばっかりでした。いや、嘘で良かったけど。もし、これらの事前情報が真実だったなら、凡作どころでは済まず、ギミック込みで完全な駄作になっていたことでしょう。凡作で済んだのは、これらの事前情報が全て嘘だったからです。

次元、ゲーム世界、プレイヤー

12Riven公式サイトProduction Notesによると、

integral<インテグラル>とは日本語で「積分」。面積を求める操作。
状況によっては、より高次の関数になることもあり、つまり、次元があがることがあると言える。本作では世界の次元から現実世界の次元への、その次元を超える操作に「インテグラル」という言葉をあてている。そしてこれが、我々が「インテグラル」に込めた想いである。

作品中に「次元を超える操作」は出てきませんでした。メデタシメデタシ

本作ではこの仕掛けにストーリー、デザイン、演出、操作をからませ、「自分がプレイヤーであるからこそクリアできたし、物語世界の問題が解決できた」という結論に帰結するように構成されている。つまり、プレイヤーもゲーム世界のシステムの一つであり、ゲーム全体を構成するのに欠くことの出来ない要素なのだ。そして、そのシステムを本作では「インテグラル」と名付けた。


ゲーム世界からより高次へ向う仕掛けを用意し、物語世界・開発者・プレイヤーをトータルに結びつけ「全体」を作り上げるシステム、それが「インテグラル」なのだ。
これはゲームにおけるメタフィクションの実験であり、新しいエンターテイメントへの挑戦である。

作品中にプレイヤー云々との結論に帰結するように構成は出てきませんでした。メデタシメデタシ

不思議な術

雑記帳Aug.21.2007によれば

ここで、みなさんが気になっているのは恐らく、『不思議な術』って何? ってことではないでしょうか?
答えは超能力です。
っていうと、一言で解決しますし、たぶん、みなさんがっかりすると思います。
しかし、ちゃんと仕組みがあるのです。
それは普段、私達が実際に行っている事の応用だったりします。
本作をプレイしてみれば、恐らく、人間の身体の不思議な面が見えてくることでしょう。

Ψと呼ばれる『不思議な術』は「普段、私達が実際に行っている事の応用」では絶対に実現不可能な超能力(というか、超電波?)の類い・・・という設定でした。メデタシメデタシ。プレイすると「人間の身体の不思議な面が見えてくる」というのは嘘ではないけれど。

補足しておくと、出来たからどうとか、出来なかったからどうという話ではありません。フィクションの中の超能力である以上、「普段、私達が実際に行っている事の応用」とすることは絶対にあり得ないことなのです。既存の技術にない誰も知らない画期的な新技術を実現できるなら、それを元に真っ先に物語を書くのは無駄が多過ぎます。そんなことをする前に、特許を取るなりして新発明として売り出した方が効率的です。物語を描きたければ、その後に、いくらでも描けば良い。そうしたプロセスを踏んでない以上、実現可能な画期的新技術が登場することはあり得ないのです。

現実的に実現可能かどうかと言えば、言うまでもなく不可能です。これしか答えはありません。ここで言っていることは、フィクションと現実の区別がついてなかったら痛すぎるという話です。監督は可能だと嘯いていたので痛い話かと思っていたら、ゲームをプレイした限りでは、ちゃんと区別がついているみたいで安心したという話です。

監督と作家の意思疎通

Production Notesでは、「インテグラル」を何度も連呼していて、非常に鼻息が荒い。

  • その次元を超える操作に「インテグラル」という言葉をあてている。
  • これが、我々が「インテグラル」に込めた想いである。
  • そのシステムを本作では「インテグラル」と名付けた。
  • インテグラルには「全体」という意味もある。
  • それが「インテグラル」なのだ。

「インテグラル」の説明の直後、間に何も書かずに、「これは〜」と書いているのだから、「メタフィクションの実験」や「新しいエンターテイメントへの挑戦」が、この「インテグラル」のことを指していることは明らかだろう。ここまで鼻息を荒くして、「〜の実験」や「〜の挑戦」と言っておいて、これがメインテーマでない・・・ということは、何処をどう読んでもあり得ない。

一方で、打越氏のブログの2006年11月22日のエントリーでは、次のように述べられている。

でも、その点についてはどうかご安心ください。この物語を理解するのに、数学や物理学や、その他の専門的な知識は一切必要ありません。
“∫”は、このゲームを示すひとつの象徴みたいなものであって、決してメインテーマというわけではないのです。もちろん「積分を知らなければ、この物語は楽しめない」なんてことも絶対にないです。というか、ぼく自身、積分を正確に理解しているとはとても言えないですし……(^-^; とにかく、誰にでも楽しんでいただけるわかりやすいお話です。

打越氏は、メインテーマではない「象徴みたいなもの」と断言しているのだ。実は、打越氏には、「〜の実験」や「〜の挑戦」のような意図は全くなかったのではないか。それなのに、監督が監督が勝手に勘違いして、「〜の実験」や「〜の挑戦」と盛り上がってしまったのではないだろうか。「普段、私達が実際に行っている事の応用」も監督の勘違いではないだろうか。監督と作家の意思疎通が不十分だったとしたら、チグハグなシナリオに終わったことも納得できる。もしかすると、打越氏の意図通りに作られていれば、もっとマシな作品になったのかもしれない。

とはいえ、打越氏に責任がないとは言えない。というのも、打越氏は原案者だからだ。原案の構想を正しく伝えることができなかったとしたら、それは原案者の落ち度だろう。

作画崩壊?

作画崩壊と大騒ぎする人が居るが、それほど酷い絵だろうか。確かに、具体的に比較すると作画のバラツキが確認できる。しかし、こんな物は、本物の作画崩壊に比べれば、崩壊のレベルが全く違う。有名所で、超○空要塞マ○ロス*7の例を挙げてみる。次は、作画が良いと言われる絵。

macross_12.jpg

次は、割と普通の絵。

macross_1.jpg

次は、作画崩壊の事例。

macross_3_2.jpg

設定では美人のはずなのに、この絵は、目の大きさや配置の左右対称性が崩れ、かつ、目の間隔が広過ぎのヒラメ顔&妙に面長の馬面・・・どう見ても美人と対極の位置にいる人ではないのか。動画で見ると崩壊の酷さが良く分かるのだが、静止画で見ると何故か酷さが半減する。各部パーツ等の大きさがコロコロ変わる等、顔形が安定せず、同じ放送回の中でも、というか、ついさっきのシーンと比べても全くの別人という有様である。ちなみに、下がこのシーンの1秒前。

macross_3_1.jpg

これは、目の部分を見なければ、同一人物と言えなくはないかもしれない。しかし、この絵から上の絵に直接変化したときの違和感は、両者を見比べて想像すれば何となく分かるのではないか。別のカットでは目の大きさが3倍くらいあったり、頭が妙にデッカくなってたり、とても同一人物には見えない。シーンが変わる度に「あんた、誰?」と言いたくなる。

この程度はまだ序の口だと言う。昔、家庭用ビデオデッキがない頃の作画崩壊は、口コミでの伝承しかなく、決定的証拠がない。それ故、再放送等の折にコッソリと修正されたりしているようだ。

それに比べれば、12RIVENは随分とマトモな方だろう。この程度で作画崩壊とかガタガタ騒ぐのはちょっと忍耐力が足りないんじゃないかと思う。というか、画集じゃなくてゲームなんだから、シナリオを評価しろと小一時間・・・。

余談

Wikipedia:12RIVEN_-the_Ψcliminal_of_integral-の明らかに誤った情報を誰も修正しないのが面白い。

プレイステーション2版は、2007年12月6日に発売予定だったが『ご満足いただけるクオリティに達する事が出来ない』という判断で、2008年2月14日に延期、さらに再延期で2008年3月13日になった。原案・打越鋼太郎氏本人のブログによれば、サイバーフロントがシナリオが面白いと思って頂けたからこそ「さらに予算をかけてクオリティアップを!」との英断を下したと監督若林健から伝え聞いたとの事。また、シナリオの遅れも原因らしい。

何処をどう解釈すると「シナリオの遅れ原因」と思えるのか、この記事を書いた方を小一時間問いつめたい。 誰がどう見ても、シナリオの遅れ主原因である。

前半部分は、打越氏のブログの10月02日のエントリーを情報源として書かれたものである。

ひとことで言うと――「うしっ、やりきった!」そんな感じです。オフィシャルのコメントだけだと誤解される方がいらっしゃるかも知れませんので、念のため、ここで憚りながら書き添えさせて頂きますと)今回、サイバーフロント様のほうで英断を下されたのは「このシナリオならいける!」との見込みがあったためではないかと思われます。つまり、シナリオを面白いと思って頂けたからこそ「さらに予算をかけてクオリティアップを!」との英断を下していただけたということです。もっとわかりやすく言うなら「30点を60点にするための延期」ではなく「90点を120点にするための延期である」とお考え下さい。(以上は、ぼくの独断ではなく、監督の若林くんから伝え聞いていることなので確かだと思います)……と、こんなことを言うと、あたかも延期を肯定しているかのように誤解されてしまいそうですが、もちろん、決してそういうわけではありません。*8

7月25日の「忙殺」と題された僅か3行のエントリーの後、ブログが10月まで放置状態だったこと(その前のエントリーは6月21日)、公式の雑記帳(6月25日)に「僕と打越さんはサイバーフロントでカンヅメ中」と書かれていること等から、原稿が仕上がった時期は、9月30日〜10月1日頃であろうと容易に推測できる。

プレステ2の場合、おおよそ発売の2ヶ月くらい前にはマスターアップしておかなければならないようだ。 その辺の事情を知っていれば、シナリオが9月末まで遅れると12月中旬の発売に間に合わないことは直ぐに分かるだろう。

だから、分かる人には、シナリオの遅れが延期原因だと一発で分かってしまう。 それを裏付けるように、打越氏のブログの10月04日のエントリーが追加され、10月02日のエントリーの該当部が削除された。

今回の発売延期は、ぼくのシナリオが遅れてしまったせいであって、他の方々にはまったく責任はありません

誤解を与えるような記述を打越氏が書いた理由は依然として謎である。 しかし、それ以上に謎なのは、この文章を読んで、Wikipediaの記述を修正せずに「また、シナリオの遅れも原因らしい。」と追記したことであろう。 履歴を見れば分かるが、追記した人と、元の文章を書いた人は同一人物である。 よって、誤った記述の修正に遠慮は必要ない。

少なくとも、10月04日のエントリーを読む限りでは、「シナリオの遅れ」が副次的な原因であるとは考えようがない。本人が断言しているのだから、延期の主原因が「シナリオが遅れてしまったせい」であることは、明らかだろう。 何処をどう読んでも「シナリオの遅れ原因」と解釈する余地はない。

シナリオが遅れたことが延期の原因ならば、30点を30点のまま、あるいは、90点を90点のままにしても、延期は避けられない。 つまり、「クオリティアップ」をするかしないかに関わらず、発売延期せざるを得ない。 だから、「クオリティアップ」が延期の原因ではないのは明らかだ。 どうせ延期だと割り切って、延期期間を少々延ばして「クオリティアップ」を図ることはあり得るが、それは、ついでの行為に過ぎない。

10月02日のエントリーが誤解を与える内容だったからこそ、該当部が削除し、次のように謝罪を繰り返しているのである。

何度謝っても済むことではありませんが、心の底から深く反省し、重ねてお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。スタッフの皆さんに対しても、発売を心待ちにしているファンの皆さんに対しても……。

特に誰かに何かを言われたというわけではないのですが、前回の記事は配慮に欠けた点が多々あったため、ここに書き添えさせていただきました。

最後にもう一度だけ……。御迷惑をおかけしてしまったことにつきましては、深く反省し、お詫び申し上げます。同時に、ご協力いただいていることにつきましては、心から感謝の念を抱いております。本当にありがとうございます。

以上のことからも、10月02日のエントリーの該当部を絶対視する理由はない。

所詮ゲームに関する内容に過ぎないとは言え、ここまで不正確な記事が長期放置されたままでは、百科事典としては失格だろう。 いや、ゲームのことだからこそ、学術的なことよりも執筆者候補が多いはずで、このような記述は淘汰されて当然だと思う。 そうならないことは、多数の執筆者の善意が集まれば良い記事になるはずという目論見が甘いことを示しているのではないだろうか。

Last modified:2010/05/01 00:05:38
Keyword(s):[12RIVEN]
References:[Ever17レビュー]
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*1 嫉妬する所の心情描写をしっかり描いていれば、高江ミュウもDQNとか言われなかったのに。 あと、真琴への虐待も、具体的な描写はなく、テキストで虐待されてったって書くだけじゃ、他人事のようで少しも心に響かない。 過去シーンも、現在進行形のシーンも、いずれのシーンも、表面的なエピソードをなぞっているだけで、登場人物の苦悩等が全く伝わって来ない。 これと対極にあるメモリーズオフは、心情描写がしっかりしていて、登場人物の苦悩が良く分かる。 Ever17も、メモリーズオフには及ばないが、それなりに心情描写が描かれていて、茜ヶ崎空の苦悩する様子などは見てて痛々しかった。

*2 全人類愚民化計画」はないわ

*3 前述しているように、プレイヤーが気付いていることを主人公が不自然なまでに露骨に無視する現象のこと

*4 ここからが良い所なのに・・・って所で視点変えんなよ!

*5 未完成では何のために我慢して疑似科学設定を受け入れたか分からない

*6 Ever17はもっとシンプルだった

*7 伏せ字にした意味は全くないわけだが

*8 某所より回収